車いすユーザーである夫との
生活で歯痒さを感じる日々、
それが活動のスタートでした
私の夫は車いすマラソンの選手でした。外出したとき車いす優先駐車場になかなか車が停められず、お節介な私はいつも「そこ車いす優先やけん停めたらいかんですよー!」と言って、時には喧嘩をすることもありました。声をかけてもかけても状況が変わらず、いつも歯痒い思いをしてたんです。
そこで気づいたのが「怒りや憎しみでは人は変えられない」ということ。そして、みんな車椅子ユーザーの事情を知らないだけかもしれない、ということ。だったら、当事者である私たちが状況を発信し、車いす優先駐車場に停めない思いやりを持った人を増やそうということで、啓発活動を始めました。そして、啓発用のステッカーの売上で障害のある子どものジュニアスポーツ教室も開催するようになりました。
飲酒運転で最愛の息子を亡くす
活動を始めて2年、高校生の息子とその友人を飲酒運転で亡くしました。「即死」と言われ状況が掴めず、悲しむ暇もないまま葬儀の準備をしなければなりませんでした。たくさんの記者が家や葬儀場に押し寄せて、訳もわからないまま「飲酒運転は犯罪です。」とカメラに向かって話しました。後で知ったことですが、息子たちの事故は大きなニュースになったそうです。
その後いくつかのご縁をいただいて、飲酒運転撲滅を訴える機会もいただきました。しかし、現実はとても厳しく、飲酒運転は一向に減りません。じゃあどうしたらいいのか、とヒントを求めて大学の教授に行動心理学を学びに訪ねたんですね。「人間の行動を闇雲に変えるのは難しい。遠回りに思えるかもしれないけど、1番の近道は”言い続けていくこと”です。」先生からそう答えをいただきました。
そこから本格的に講演活動を始めました。公民館、小中高校、企業、アルコール依存症の病院、どんな小さな場所でも足を運び、どうかみんなが思いやりを持ってハンドルを握ってくれるように一緒に声をあげてください、そうお願いをして回るようになりました。
少年院で出会った
居場所を求める子どもたち
講演活動を続ける中で「飲酒運転は再発が多い。加害者と被害者が手を取って飲酒運転撲滅に動かないといけない。」当時保護観察所の所長さんからお声かけをいただきました。そして刑務所や少年院にも足を運ぶようになりました。
そこで出会った少年たちは、居場所を求めて犯罪に手を染めていましたんですね。「俺たちには居場所がなかったけん、学校も行かんでウロウロしよった。声をかけてくれたのが暴力団の人たちで、その人たちに嫌われたくなくて悪いことばっかしとった。」と話してくれました。そんな彼らも関わるうちに、「ここを出たら山本さんの活動ば手伝いたい」と言って手伝いに来てくれるようになったんです。
ああ子どもたちには居場所が必要なんだな、そう強く思うようになりました。それだったら、と法人の事務所のある倉庫に地域の子どもたちがいつでも立ち寄れる図書館を作ろう、と居場所事業を始めることになりました。
まちかど図書館で、
生きづらさを抱える
お母さんたちの存在に気づく
まちかど図書館を始めて、地域の子どもたちがたくさん遊びに来てくれるようになりました。そして、子どもたちの中に困っている子がいるということに気づいたんです。昨日からご飯を食べてない子がいたりとか、児童相談所から連絡があったりとか。
よくよく話を聞くと親御さんが子育てに困っていることに気づいたんですね。子どもたちが健やかに育つためには困りごとを抱える親御さんをどうにかしないといけないと思いました。親御さんの中には障がいがある方もいて、就労の体験ができる居場所が必要だ、ということで就労継続支援B型作業所「はぁとふんわり工房」が始まりました。
12年間、たくさんの方からの応援やご協力をいただきながら活動を続けてきました。
目の前の課題に向き合い続けて様々な活動を行ってきましたが、
その全てに「思いやり」を増やすことで社会を良くしたいという想いがあります。
活動を始めてから、福岡県では飲酒運転に関する条例が作られました。
まちかど図書館は3万人の子どもが利用する居場所となりました。
私たちの「思いやり」が、確実に社会を前進させています。
はぁとスペースはこれからも、足元から少しずつ「思いやり」を増やし、
まちに笑顔を増やしてきます。
代表メッセージ